<<ホームへ
<<課外授業へ
<<活動履歴目次へもどる
 

ワークショップ・見学会 活動内容

非電化工房見学レポート レポート

2008年10月25日(土曜日)

非電化という概念を提案し、数々の非電化製品を発明されている藤村靖之先のご自宅兼工房の見学会を行いました。
非電化製品 = 電気に頼らず生活を愉しく快適にする道具
※非電化について詳しくは藤村先生の非電化工房ホームページをご覧ください http://www.hidenka.net/

非電化工房全景非電化工房全景

那須にある緑に囲まれた非電化工房です。那須高原SAのすぐそばで高速にとても近いのですが、木々に遮られとても静かで気持ちの良い空間に建っています。
起伏のある敷地は2800坪あり、池の畔にご自宅と工房が佇んでいます。
参加者一同、「うらやましい !」の連発でした。

天窓のある自宅白と青を基調にした室内暖炉のある室内

◎ご自宅
天井が高く天窓で太陽光を存分に取り込め、白と青を基調としたとてもお洒落で明るい室内です。
明るさは太陽から、夏の涼しさは風から、冬の温かさは暖炉の炎からと、やさしいエネルギーで成り立っているお家です。
電気使用量は一般住宅の1/6程度だそうです。
20人が泊まることができるロフトも完備されていてワークショップなど可能だそうです。
今後、敷地内に建設予定の非電化カフェの建築ワークショップを企画されるそうです。楽しみです。

工房

◎工房
こちらも天井が高く明るい室内です。治具や加工器具がずらりと並んでいます。
整頓され見るからに作業しやすそうな工房です。
自分の手を動かしてこそ発想が生まれるとの信念のもと、お弟子さんにもここでみっちりモノづくりの基礎を叩き込まれるそうです。
至る所に過去や現在そして発明された非電化製品が置いてあります。非電化製品ファンならずとも楽しい空間です。

 

 

 

非電化コーヒー焙煎機非電化冷蔵庫モンゴル用非電化冷蔵庫

◎発明品(詳しくは藤村先生のホームページへ http://www.hidenka.net/hidenkaseihin/hidenkaseihin.htm
「非電化コーヒー焙煎機」(写真右)
この一つの道具にいろいろな思いが込められています。ブラジルのコーヒーの有機栽培の悲惨な現状に端を発し、
使いごこちや音、上達することの楽しさを感じことなどいろいろこだわっているそうです。
奥様がこの焙煎機で炒った豆で美味しいコーヒーを入れてくださいました。

「非電化冷蔵庫」(写真中央、左はモンゴル用非電化冷蔵庫)
電気を使わずものを冷やす、この冷蔵庫は電気信仰に陥っている我々に強烈なインパクトを与えてくれます。
この日も冷蔵庫の中の温度計は二度を指していました。
全体の大きさに対して冷蔵庫内部の容量ははあまりないので、この冷蔵庫を使うには冷蔵庫の使い方自体を見直さないと使えないように思います。
電気冷蔵庫はどんどん大型化し、それにつられどんどん詰め込んでどんどん廃棄して。。ほんと考え直さないといけないですね。
製造コストがかなりかかり(約10万円)今後の製品化は難しいそうですが、自作するのは自由とのことです。モンゴル式の冷蔵庫は日曜大工で出来そうです。

初期の足踏み式シンガーミシン初期モデルのタイプライター

アイロン温度差駆動式永久時計

◎コレクションの数々
「初期の足踏み式シンガーミシン」「初期モデルのタイプライター」「アイロン」「温度差駆動式永久時計」
いろいろな過去の非電化製品がコレクションされています。
ミシンは100年以上も前の品なのに現在のミシンと基本構造は変わらないのに驚きます。
長年大切にされることを前提としたものは本当に美しいです。
アンティーク好きの方の気持ちが少しわかりました。

◎お話
モンゴルでの非電化プロジェクトや九州で作ったストローベイルハウスの野菜保存庫の話などさまざまな話をしていただきました。
その他、心に残った話を羅列しています。

 

「小さいビジネスを複数持つ」
田舎に移住する若者が増える一方、田舎から都会へ戻る人も増えているそうです。
最大の原因は田舎での生活費の確保。
その解決策として、田舎で数十万を稼ぐことは難しいので数万円稼げるというビジネスを複数もつことを提案しているそうです。
たとえば、自動車バッテリーの再生ビジネスや薪の宅配ビジネスなど。
小さいビジネスは大きな資本が参入しないので個人でもやっていけるとのこと。
働き方の新しい形として、田舎に移住する人の原動力となることを期待します。

「認識から行動は生まれる」
電気にすっかり頼って生活しているのに何にどれだけ電気を使っているか把握している人はほとんどいません(私もそうです。。)
家庭でどのように電気を使っているか表を使って説明してもらいました。以外にも電気ポットのようなものに多大な電気を使っていることがわかりました。
少しの便利のために、原発数基分の電力が必要とされているのです。
きちんと認識すればおのずとすべきことは見えてきます。あとは行動するだけです!

「愉しい道具は五感を使う」
なんでも電動化、マイコン化の昨今。スイッチ一つであとは機械にお任せですがそこには愉しみはありません。
試しに掃除機のかわりにほうき(ただし名人の作ったほうき!)を使ってもらうと使った人誰もが掃除機より楽しく掃除できたと言うそうです。
ほうきで動作を起こすと手に手ごたえが帰ってきます。それが愉しさにつながるようです。
性能、効率以外に愉しさという軸が道具にはあるんだということを再認識しました。

「世の中は想像以上の速さで進んでいる」
一年間にデジタル化され配信される文章量は、今までの人類すべての書物の文章量の数百万倍だそうです。
また、一週間に新たに生み出される化学物質の種類は数万になるそうです。
自分が知らないだけで想像以上に世の中はすごいスピードで進んでいました。というか暴走していました。恐怖心を覚えます。

「アフリカの人の悲しい変化」
アフリカによく行かれる藤村先生が感じるアフリカの国々の数十年前との明らかな違いは、「自分は不幸だ」という人が増えたことだそうです。
不幸の理由は物質的貧しさ。数十年前はモノがないからと言って不幸と嘆く人はいなかったそうです。
資本主義社会の物質的豊かさを幸せの絶対的指標とする考えが世界中を覆っているのだと悲しくなります。
物質的豊かさを享受している私たちが、異なる幸せの指標というものをしっかり持って示していかないといけないと感じました。

◎感想
いろいろ見学してお話を聞いて心の栄養をたくさんいただいた一日でした。
穏やか口調でユーモアを交えながら語られる一つ一つのことに、目からうろこの連発でした。
問題山積みな世の中ですが、それらを冷静に分析をしつつ今後の展望を語られる藤村先生は本当に愉しそうで
、こちらまで前向きな姿勢になりワクワクしてきました。普段嘆いているばかりの自分を反省です。
ご自宅や工房の品々からは、物には機能だけでなくそこに込められた思いや様々な物語という背景があることを強く感じました。
そんな物に囲まれた生活は物に支配されることなく、物との愉しい共存になるのだと思います。
非電化製品は、エネルギーを使うことに鈍感になってしまった私たちに立ち止まるきっかけを与えてくれる存在です。
一人でも多くの人が非電化製品と生活を共にして、何気なく使っている電気に向き合い「本当に電気でなければいけないの??」
と電気の必要性を考え直してくれることを願わずにいられません。(K記)

▲ページ上部へ