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生垣探偵団ヘッジホッグ

生垣考2.<機能>

生垣の機能・役割

 西洋庭園では、整形式という様式を成り立たせるうえでも、思想的な意味(キリスト教における楽園のイメージの創造)からも、生垣はきわめて重要な存在である。
 和風庭園は、非整形式な様式を特徴としているため、直線的表現を持つ生垣を庭園の主要部に使用する例はきわめて少なく、不要な背景を隠蔽する目隠しや外周部の外囲いなど、わき役的利用にとどまることが多い。

1 空間の分割

・境界あるいは領域を明示することで、それぞれの空間の持つ意味や質、所有の違いを明確にする。

<例>シシングハースト庭園(英)…丈が高く密度ある生垣によって区画した、分割された小庭園を巡り歩く空間構成。まだ見ぬ隠された庭への期待感を高める効果を生む。

<例>旧古河庭園(東京)…空間をきっちりと分割するのではなく、自然風の稙栽によりなめらかに景観を転換させる見え隠れの手法を生かし、西洋庭園と日本庭園を共存させた。

2 隠蔽(目隠し)及び背景

・庭や室内を見透かされないよう、外部からの視線を遮る。

・『隠す』ことにより『見せる』…内部からは庭の景観上目障りになるものを隠し、緑の背景となって見せたいものを視覚の中に浮かび上がらせる。西洋庭園における花壇やオーナメントの背景、借景庭園 (=敷地内の庭園の外にある自然景観や人工物などを庭の景観の一部として取込み、鑑賞する)など。

<例>円通寺(京都)…借景庭園。高さ約1.8mの混ぜ垣が、高台にある円通寺と比叡山の間のにある景色を隠し、近景の庭と遠景の比叡山とを一体として見せる役割を果たしている。

<例>銀閣寺(京都)…石垣・竹垣・生垣の三種を組合わせた高垣が視界を閉ざし、中門を入るまで参道以外何も見えない。参道を歩く人の心理的転換装置としても機能していたと考えられる。

3 防災機能

  防火(=延焼防止)機能が最も発揮できる条件は、
1)火元の建物と道路を隔てる位の距離があり、
2)二階の窓、できれば軒下くらいまでの高さを持つ高垣で、
3)枝葉が密生し多肉質で含水量の多い樹木(シイ、カシ類、サンゴジュ、モチ、モクセイ、ユズリハ等)の生垣である。

4 環境改善機能

1)防音・生垣の葉の密度が高く、幅があり刈込高が高いほど効果があるといわれる。

・常緑樹の方が落葉のない分、年間を通じて効果を持続できる。
・防音壁(表面に常緑のツル植物を吸着させたもの)との併用は、更に効果を増す。

2)防風・屋敷を囲む高生垣は地方によって樹種が変わり、その地方独特の地域景観を形成する重要な役割も担っていた。

・生垣や稙栽は風を受けても一部を通過させ、一部を受け流して風を弱めるため、ビル風への対応にも高い効果を発揮する。

3)防塵・土ぼこりや大気汚染物質(呼吸器系疾患等の原因となる)などの浮遊する塵埃をとらえ、大気を浄化する。

5 装飾としての生垣

生垣を機能という枠の中だけに押し込めることなく、鑑賞の対象とする試みも行われている。

・使用される樹種の持っている固有の樹形や性質を生かす。
・複数の樹種を使い、個々の特徴(性質、葉の質感、色合い、季節的な色彩など)を生かしながら組合わせ、全体として変化に富んだ生垣をつくる。

6 アートとしての生垣

・西洋庭園のトピアリー…動物や鳥などの具体的なものや、抽象的、幾何学的な形に刈り込んだもの。
・通常の生垣の形態を組合わせて大きな空間構成の中でアートとしての表現を見せる。ビックサイト(東京)周辺では生垣が特異な景観を作り出し、空間を様々な見え方で演出する役割を果たしている。

7 遊びの庭と生垣 ー メイズ(迷路)

丈が高く密度のある生け垣によって作り出される複雑な経路を持つ小径が、屈曲や行き止まりなどの試行 錯誤を重ねて中心部にたどり着き、再び出口に戻るよう計画された遊びのための庭。

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