▽おわりに
◆5月16日 堆肥・腐葉土・ボカシの作り方、成分、化学肥料との比較
講師 有機農業従事者 金子美登先生
有機農業による作物は、美味しい・安全・安心。消費者の7―8割の人は、安全で
美味しいものなら買う。
有機栽培の基本は土づくり。ふかふかの土(団粒構造)を作るために堆肥が重要。
■堆肥:一般的に完熟堆肥が良いと言われているが、理想的には中熟程度が良い。
但し、初めての場合は完熟が良い。未発酵のものは、分解に際して有毒なガスや有機酸発生。害虫・雑草発生他の問題あり。
堆肥作りは、炭素率(炭素C含量/チッソN含量=25〜40)と水分調整(50-60%)が大切。
植物の病気は、日本に4500種類ある。内8割がカビ菌により起こる。良い堆肥を使うと病気が出ない。
化学肥料での土作りは、単粒構造の土となる。
■ 腐葉土配合:落ち葉8、コメヌカ0.5〜1、土1、モミガラ0.5〜1の割合。
■ 土ボカシ配合:土3、コメヌカ1、オカラ1、モミガラ1、落ち葉0.5、鶏フン0.3〜0.5の割合。
工業と同じ競争をすると止めざるをえない。
農業は生きた生産。 健康・命・安全・環境を守る。誇りを持って作ることが重要。
◆5月30日 化学農薬の危険性と植物保護液について
講師 且O浦グリーンビジネス社長 三浦達也先生
化学農薬は人間が作り出したもので、自然界で分解しにくい。畑や花壇に撒かれている石灰は、セメントを作り出すときの産物。土が固くなり(単粒構造)、植物が成長しにくい面を持っている。化学農薬は、益虫・害虫の区別無く皆殺しにしてしまう。
安全な農薬は無い。農薬は皮膚からも進入。化学物質は残留する。人間への害は計り知れない。
自然界は全てバランス。今、人間は、その環境を壊してしまっている。
自然の森や林はいろいろな植物が、いろいろな成分を出し合い助け合って生きている。
動物が住めない環境は人間も住めない。豊穣な山、豊饒な海、繋がっている。
美しいバラは、心の癒し。農薬をかけないで育てたい。
植物が自ら生み出した自然の知恵を利用して、植物のための植物保護液[碧露・緑豊]
他を開発・販売している。化学農薬に変わる、残留のないものを作っていくことが重要。
◆6月20日 本当に安全な建材 そのU 塗料・接着剤
講師 潟eクノプラン建築事務所 佐藤清先生
室内及び環境汚染の原因となる化学物質による健康被害を知り、正しい情報・選択の力を持たなければいけない。断熱材にスチレン、塗料・接着剤にベンゼン・トルエン、塩化ビニールにホスゲン、耐水・防腐剤にフェノール、防腐剤・糊のような性質を持つホルムアルデヒドなど多くの化学物質が、建築材料・製品に使用されている。
農薬として使われるものを、建築で使用すると薬剤と言う。その薬剤は、使用される環境・温度、様々な状況で揮発・有毒ガスを発生し、空気中に浮遊する。そしてそれらは、呼吸器・血液、そして最後に脳にくる。建材及び製品に、含有量が少量表示されているものでも、0%ではない。自然に帰らない有害物質は、放置することも、焼却することも難しい。住宅に住む・建てるときは、良い点だけでなく、問題点にも目をむけることが大事。
■建築と健康のポイント
1.有害化学物質を知り、取り入れない方法を考える。
2.高気密・高断熱の住宅は快適ではない。
3.呼吸する建材で作る。
4.電磁波などに注意。
5.リサイクルできるか。
6.石油素材から自然素材へ。
■8月29日(水) エコガーデン 実施計画1 見積り、実務
講師:長濱香代子先生
施工例および実施計画のポイントを紹介。
■施工例
<壁面緑化> 場所:六本木 飲食店舗商業ビル、広さ:縦13m×横7.5mの壁面、製作材料:ステンレスボード・PVCボード・NFボード・不織布等、植栽の特徴:常緑樹多用、
注意点:耐荷重・水遣り・公道面落下物(パネル・植栽株・水滴・土等)、
耐用年数:8年位想定
<別荘の庭> 場所:軽井沢、敷地:330坪、
カラマツ(落葉針葉樹)・モミノキ(常緑針葉樹)が生えていたやせた土地。
広葉樹を追加植栽。デザインポイントの焚き火スペースは家族の楽しみの場。
広いスペースは意匠的に存在感のあるものをつくるとよい。
■実施計画
土地を読むことで、湿度・風通し・日照等が分かる。クライアントの要望がスペース的に無理な場合は、優先順位をつけ、実現。また金額のかかるものは納得してもらうことが大事。植物は大きくなる、デザイン的に余白の部分を意識すること。
図面で見て綺麗でも、実際の微妙なバランスを見るため、製作途中の段階で確認することは大事。現場を見て分かり、判断できる。
建物を美しく見せるため、サイドに木を植えて目線を惹くと良い。
風化していくもの、五感に響くもの・・・敷石・石積み・石組み・飛び石・植物は美しい。
■9月19日(水) エコガーデン実例 エコ材料を使った庭 講師:川口豊先生
■資材-考え方
1.天然素材であること。2、リサイクルされ、やがて自然に戻ること。
■材料調達〜造り方
素材は必ずしも購入するものだけではない。混ぜればゴミ、分ければ資材。
一見すると廃棄物も、考え方によっては材料になる。アイディアとデザインで、それでなくては表現できなかったと思えるような庭に造っていくことが大事。
造園の仕事は手間仕事の部分が多い、如何にそれを少なくするかとなるが、逆に手間ひまをかけ、施主にも参加してもらい「一緒に庭づくりを楽しみながらやっていく」問いかけをすることも重要。
■作庭にあたって
○用と美のバランス
例えば、園路。ただ歩きやすいだけではつまらない。歩みをゆるくする・立ち止まる・・・、精神的な楽しみを味わえるように造る。そして半公共的な庭として捉え、作庭する。
○忘れられない場所・・・先生の言葉より。
人は、草や木や虫やけものたちと大地のうえに、その場所を借りて暮らしている。
自然のめぐみと、その営みを忘れて、私たちの魂のやすまる場所はない。
私たちは、たぶん、風の色で描かれた、その場所をさがしている。
森の歌を聴きたいと、心のそこで、きっと願っている。
気づいてほしい、ほんとうの豊かさについて、この地上に生きている、意味について・・・。
■10月3日(水)自然エネルギー 太陽光発電・風力など
講師: 越田 和晴 先生
人間活動はエネルギーなくして成り立たない。できるだけ自然エネルギーでまかないたい。
■太陽光発電
家庭用が日本で本格的に売り出されてから10年ほどなので、耐用年数は20年と 言われているが未知数。
一般的な3kw〜4kwで200万円〜300万円(設置費含む)。本体のメンテナンスは 20年間ほぼ必要ないが、劣化により20年で発電量が1割減る。経済的には、20年 でやっとプラスになる程度。
太陽発電だけで必要電力をまかなうためには、大量のバッテリーが必要になる。
廃棄時のリサイクルに課題が残る。
■風力発電/揚水風車
適切な場所と大きさを考慮して設置することが大切。小型の製品も売り出されているが、イメージ戦略に使われることが多いのが現状。
小型の揚水風車は風速1〜2mでも水を汲み上げることができ、ビオトープ池の水循環 などに便利。
■真空式ソーラー温水器
真空式なら家庭で使うお湯の6〜7割は確保できる。
■ペレットストーブ
おがくずを圧縮したペレットを燃料とする。外皮(バーク)のペレットもあり、廃棄されて いるものを活用できる。
ペレット工場は増えているが10ヶ所くらい。燃料の低廉化には輸送費が課題。
いろんな機器があるが、自然エネルギーで得られる分のエネルギー使用を減らせ れば、機器をつけたのと同じ。つまり、省エネが大切。
■11月7日(水) 雨水利用とその設備、事例紹介 神谷先生
質問:雨水はきれいなの?汚いの?
答: 雨水は純水に近く降りはじめは大気の汚れが溶けているけれどしばらく 降ればきれい!
質問:きれいっていうことは、飲めるの?
答: そのまま飲むのは問題なし(でも自己責任で!)。貯めて配水することは、 いまは衛生上・法律上むずかしい。むかしは、世界中で雨水を飲んでいたんですが。
質問:庭でタンクに貯めた水はホースで撒けるの?
答: さぁ、考えてみよう!水の位置エネルギー分は飛ばせますねぇ。
というように、地球の水循環から家庭での雨水利用の実際まで、事例をふんだんに盛り込みながらご講義いただきました。小学生30人くらいを集めて話をしたくなりました。
『建築は、雨をよける屋根をつくることが出発点で、敷地内の雨をできるだけ早く外へ出すことを考えてきた。いま、東京では、建物とその敷地で約71%の土地を利用。この71%で浸水対策を考えることも可能』
『飲料水として利用する水道は非常に少ない。そのほかの水には、どこまで塩素消毒が必要か?』
さぁ、あなたも、できるところから雨水生活を!
*雨水生活のヒント*
・200リットルくらいのタンクが庭の散水や道具などを洗うにはちょうどいい。
・5〜6トンを地下に貯められると4人程度の家族が家庭内で利用できる。
・ヘドロなど汚れがたまってもほうっておく!かきまぜない!
・日があたると藻がわく→養分ができる→腐る
・ボウフラ防止にメダカを飼おう!金魚は目立って空から狙われます。
11月28日(水)循環型・環境保全農業の仕組みと里山農業の実践 平井 日出男先生
■循環型・環境保全型農業/里山農業
・化学肥料や科学農薬を使用しないことが柱
・人にも自然にも優しい農業で未来に良い環境を循環させていく
・ふくよかな肥沃の土壌をつくる
・(里山農業は)緑・水を生み出す源流であり、自然環境を整える役割も。
■豚はスゴイ!
・一度に十数頭の仔豚を出産、14首以上の乳房で育てる
・家畜の中で、1kg増えるのが一番早い。1kgで生まれて半年で100kgに!
・畑に残った野菜を処理し蛋白質となる上、糞尿は良質の堆肥をつくるのに不可欠・・・最高の循環
「家畜を飼うことから有機的な循環がはじまり、有機農法であるからこそ、ふくよかな肥沃の土壌をつくることができる。
活き活きとした土壌では(群馬では日照時間が多いこともあり)二期作・三期作が可能で、遊休農地などという余裕はない」
■吉井小菊の里
1200坪の畑で春に菜の花、夏にハーブ、秋に小菊の花を咲かせたい。みなさんのご参加をお待ちしています
*里山農学校未経験の私は、お話を伺って今度こそ行くぞ、と心に決めました。楽しみです*
◆12月12日(水) 屋上緑化と壁面緑化 森 先生
緑のカーテンの写真をぜひご覧ください!圧倒されますよ〜
http://www.map-corp.com/
給水方式は主にふたつある。
1.トップ式・・・イスラエルで開発(!)。小さい穴の開いたホースを用いタイマーで給水。安価であり最も多く採用されているが目詰まりに弱い、凍結するところで使ないなどの欠点。
2.トップ式・・・もとは乾燥地の農業用に開発。容器の底に3cm程度の水位を維持し、植物の必要な量だけをウキで水量調節する給水孔から容器側面に埋め込んだコゲート管へ給水。電気・センサーいらずで節水型。
マップ式をとりいれた栽培システムでの壁面緑化(緑のカーテン)事例についてお話を伺いました。このシステムでヘチマを育てると約30mにもなる(驚き!)そうです。
ヘチマは上に育つと下が枯れるので、事例の小学校ではゴーヤーやキュウリを育てており、子供も大喜びだそうです。都市に住む子供に農体験を、との先生の熱い想いに感銘をうけました。
◆1月23日(水) 都市コミュニティー、町なおしのパターンランゲージ 中埜 博先生
■パタン・ランゲージとは
クリストファー・アレグザンダーが提唱。人々が心地よいと感じる環境は253のパターンから形づくられるとする。
目から鱗です!くわしくは、書籍をどうぞ→
『パタン・ランゲージー環境設計の手引き』クリストファー・アレグザンダー著/鹿島出版会
■ワークショップ
ひとりひとりの夢とまち全体の夢が一致する仕掛けを見つけるためのボトムアップ方式。
■まちづくりはボトムアップで
いままで→目的から方針がきまり、方針から具体的事業が決まっていた。
これからはボトムアップで→具体的にやりたいことを実現するために方針がきまり、目標をきめる。
普段何となく感じていたことが言葉になってストンと落ち、視界がひらけた、そんな授業でした。楽しかったです。
■3月9日(日) 世界のエコビレッジと日本のエコビレッジの展望 講師 : 糸長 浩司 先生
パーマカルチャーやエコビレッジとは?から、その実践について、豊富な事例の紹介、
研究棟の前に広がるファーム(ガーデン)の紹介・解説を交えてお話いただきました。
○理想的なエコビレッジ
生態系、社会・経済性、精神性の3つのエコロジーの実現を目指した自立・完結・循環
・持続型のビレッジ
○パーマカルチャーのデザイン原則を適用する前に
対象となる場・地域の環境をよく観察・考察し、特性を読み取り、デザインに取り込む
ことが大切。
自立・循環・・・それらの要素を、どんな形で自らの生活に、自分の住む地域に取り入
れたらいいか?考えていきたいと思います。まずは、ベランダをキッチンガーデンに。
昨年4月から1年間、学校に通いました。
毎回毎回、視界が開けたり、凝り固まりそうになっているアタマがほぐれたり、未知
のことに出会えたりすることが楽しみでした。
1年間を通して学び、感じ、考えたことは、日々の暮らしや仕事で少しずつ実践し、
自分の軸をつくっていきたいと思っています。
講師の先生方、芝先生、緑の家学校のみなさま、本当にありがとうございました。